【特集記事】Society 5.0が日本の研究開発を加速させる

■こちらは、2020年7月13日に投稿された記事のため、情報の内容が古い可能性があります。

Society 5.0は日本の成長戦略の一環

令和2年度税制改正において、オープンイノベーション促進税制をはじめとする成長投資の促進に向けた施策が行われました。これは、大企業にベンチャー企業への投資を促す施策であり、内閣府の提唱する「Society 5.0」の実現に向けた成長戦略フォローアップの一環です。

最先端技術の研究開発を行うベンチャー企業に対し、大企業が積極的な投資の流れを作ることで、21世紀の基幹インフラとして安全性・信頼性が期待される5Gの導入を促進するねらいがあります。
5G技術の活用は地域社会が抱える様々な課題を解決できる可能性があるため、税制改正で企業の内部留保を投資に回すよう促すことで、日本経済の国際競争力を強化していくことになります。

そもそも、Society 5.0とは何か

Society 5.0は「SDGs」を達成するためのプロセスの一部という考え方ができます。SDGsとは、2015年9月の国際サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されたもので、2030年までの実現を目指す17の国際目標です。
「誰ひとり取り残さない」社会を実現するために、日本では3つの柱を中核とした「日本のSDGsモデル」の展開を加速化していくことになります。

1.ビジネスとイノベーション ~SDGsと連動する「Society 5.0」の推進~
2.SDGsを原動力とした地方創生、強靱かつ環境に優しい魅力的なまちづくり
3.SDGsの担い手としての次世代・女性のエンパワーメント

持続可能な開発目標 (SDGs) 達成に向けて日本が果たす役割 (外務省 国際協力局 地球規模課題総括課)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/2001sdgs_gaiyou.pdf

上記のように、Society 5.0は新しい社会を目指すための施策なのですが、もう少し具体的に見ていきましょう。

Society 5.0自体は内閣府の第5期科学技術基本計画において、「サイバー空間 (仮想空間)とフィジカル空間 (現実空間) を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会 (Society)」と定義されています。

内閣府 第5期科学技術基本計画
https://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/5honbun.pdf

狩猟社会 (Society 1.0)、農耕社会 (Society 2.0)、工業社会 (Society 3.0)、情報社会 (Society 4.0) に続く新たな社会として提唱された社会なので「5.0」と位置づけられています。

現在の情報社会 (Society 4.0)においては、多くの情報が溢れている反面、実際に必要な情報を抽出し異なる分野間で横断的に利用することが難しかったり、人間の手で処理できる情報量がデータ活用のボトルネックになっていたり、年齢や障害などによって労働・行動範囲に制約があったり…といった様々な課題が存在します。

一方のSociety 5.0では、情報社会をベースにしつつ、AI や IoT、クラウド、ドローン、自動走行車、無人ロボットといった最新テクノロジーを用いて、少子高齢化や地方の過疎化、所得格差などの克服を目指していくこといなります。世代を超えて一人ひとりが快適に活躍できる社会がSociety 5.0における理想的なビジョンです。

最先端の技術はどのように活用されるのか

現時点では実用化されていない新技術も、今後Society 5.0の実現に向けて研究開発が加速していくことが予想されます。

医療

現在の社会では、とくに都市圏から離れた地域の限界集落化や少子高齢化が進んでおり、高齢者の自立的な生活や医療提供のあり方が課題になっています。

Society 5.0では、医療現場の情報や環境情報、リアルタイムの生体計測データなどをAIが解析することで、リアルタイムの自動健康診断や病気の早期発見、医療データの共有による最適な治療や、医療・介護現場でのロボットによる支援などが実現できるようになります。

Society 5.0 時代のヘルスケア (日本経済団体連合会)
https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/021_honbun.pdf

生体センサ技術の一例

 

交通

現在の交通に関する課題としては、遠出する際のルート計画や渋滞予想、交通事故、そもそも移動手段の確保といった課題が考えられますが、Society 5.0では交通シーンも変わります。

自動車のセンサー情報と、天候や交通、その他宿泊や飲食などサービスの情報、過去の履歴やデータベースといったビッグデータを、AIが総合的に解析することで移動支援、事故や渋滞の緩和はもちろんのこと、公共交通やカーシェアとの連携でスムーズな移動をサポートします。また、ユーザーの好みに応じた観光ルートの提案により、地域振興を活性化させる面でも期待されます。

国土交通データプラットフォーム整備計画 (原案)について (国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/001283032.pdf

自動運転に関する技術の一例

 

防災

現在も自然災害の発生時にはスマートフォンなどで緊急速報が入りますが、Society 5.0では避難誘導から被災者の救助・救援においても最適化が進みます。また、被災者の迅速な救助、避難所に対する支援物資の内容・タイミングの最適化といった課題も、Society 5.0ではより最適化が進むことになります。
災害状況の把握・観測の面では、人工衛星や地上の気象レーダーからのデータ、ドローンによって迅速な情報収集と分析が可能になり、より詳細な被害情報や交通状況などは建物や自動車のセンサーによって提供されます。

また、近年の災害では避難所の受け入れ状況や物資の不足などに関する情報共有も課題になっていますが、AIが情報を解析することで、個人のスマートフォンに最適な避難情報が提供されたり、ロボットによる迅速な救助、交通が分断された地域に対しても、ドローンによる支援物資の配送などが可能になります。

Society 5.0 新たな価値の事例 (防災) (内閣府)
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/bosai.html

四脚ロボットの一例

 

農業

農業分野では、担い手の減少や高齢化の進行などによる労働力不足が課題となっています。また、農地に対して一人あたり作業面積増える傾向にあり、今よりも作業効率を向上させる技術革新が求められています。

Society 5.0では、ロボットトラクタや収穫コンバインによる自動化・省力化や、ドローンなどによる生育情報の自動収集、気候予想や河川情報にもとづいた水管理の自動化・最適化、市場ニーズに合わせた収穫調整や天候予測に合わせた作業計画など、超省力・高生産なスマート農業が期待され、徐々にその取り組みも始まりつつあります。このような取り組みには、やはり農業データの連携基盤を元にしたAI・ビッグデータの活用が欠かせません。

Society 5.0 新たな価値の事例 (農業) (内閣府)
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/agriculture.html

作業機とトラクターのデータ連携に不可欠な規格「ISOBUS」とは何か【特集・北の大地の挑戦 第10回】(SMART AGRI)
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/agriculture.html

スマート関連農業技術 (リーフセンサ)

 

スマート関連農業技術 (ISOBUS)

 

農地測量

 

その他のシーンでの活用

上記の他にも様々なシーンで、人とモノのつながり、様々な情報の共有と活用が行われることになります。

遠隔コミュニケーション 

テレプレゼンスロボット:

 

LiDAR(センサモジュール)

ROS対応 2D距離センサー (LIDAR):

ソリッドステートLiDARセンサモジュール:

 

IoT

Google Edge TPU搭載の開発ボード:

 

測量

3Dモデリングソフトウェア:

衛星測位システムからのデータ受信ボード:

 

Society 5.0の課題

Society 5.0における新技術の開発・活用と生活様式の変化には、多くの期待が寄せられます。しかしその反面、これまでにはなかったリスクも考えていく必要があるでしょう。
特にわかりやすい課題として考えられるのは、サイバーセキュリティ、個人情報、技術面の課題などです。

サイバーセキュリティ

様々なシーンにおいて情報がデジタル化・共有化されることにより、日常生活の多くの場面でデータを管理する必要が生じます。外部による攻撃を防ぐような従来型のセキュリティ対策も有効ですが、IoTなどの技術でデータベースに接続する機器が膨大になってくると、新しいリスク対策のあり方を考える必要がありそうです。

Society 5.0におけるサイバー攻撃による被害は、サービスの停止だけにとどまらず、連携するデータベースやその他のサービスに対しても危険性があるため、深刻なダメージにつながる危険性が考えられます。

個人情報

いま現在も既にGoogleによる個人情報の収集が行われており、賛否両論あるにせよ、それらの情報が様々なサービスへ活用されていますので、メリットを感じている方もいらっしゃると思います。

Society 5.0では、個人情報の共有を増やし、分野・サービスを超えて共有していく考え方ですので、個人のプライバシー情報をデータ化し、分野の垣根を飛び越えて利用されることになります。また、日常において個人情報の共有と活用に関する同意を迫られる場面が増えていくことでしょう。

個人情報の提供に対する考えは様々ありますが、データを提供する本人とデータを管理する側やサービスを提供する側との間で、どのような規定を設けるかは重要な課題となりそうです。

技術面

現在、ビッグデータを扱う企業で有名なのはGoogleやAmazon、Facebookといった米国企業です。産業用ロボットの分野などで日本企業のシェア占有率は高いですし、日本の技術力自体は世界の中でも高水準ですが、ビッグデータやロボットだけでなく、AIや通信技術など様々な最先端技術を関連付けてプラットフォーム化していくことを考えると、これからの成長に期待せざるを得ない状況だと言えるでしょう。

Society 5.0として社会全体の革新を目指す上では、各企業による個別の努力だけでなく、国と企業の連携を強化していく必要性があると考えられます。

まとめ

Society 5.0は「人間中心の社会」であり、AIやビッグデータ、センシングや遠隔技術などを活用して、一人ひとりが快適に生活できる環境・仕組みを作ることで、世界における日本の競争力を向上させるものです。

決してAIまかせの社会ではなく、様々な情報をどのように共有し、どんな形で活用していくのかを考える上で、最新の技術を活用していくことになります。

メリットも多く存在しますが、サイバーセキュリティや個人情報の扱いは、最新技術が社会に浸透していく上での大きな課題と言えますので、対策の検討と合わせて一人ひとりの情報に対する向き合い方にも変化が必要になってくるかもしれません。

ただ、Society 5.0が理想的な形で実現できるようになれば、国際的な競争力の解決はもちろんのこと、その技術を世界へ波及させ、地球全体の問題解決にもつながるという考え方もできます。

自動車の自動運転などは既に実証実験も行われており、少しずつ現実的になっている技術もあります。Society 5.0の実現に向け、テガラも新商品・新技術の情報提供やニーズに合わせたサービス提供を目指して参ります。