【特集記事】スーパーサイエンスハイスクール(SSH)と日本の次世代人材育成

若者の理科離れが取り沙汰されますが、国立大学における工学系博士課程志願者数の割合は、10年近く横ばい状態が続いています。理科離れは日本だけでなく先進国に共通する問題であり、各国で次世代人材を育てるための取り組みがなされています。

今回は、日本における次世代人材育成事業の1つであるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)のご紹介とあわせて、STEAM教育に関連する商品をご紹介します。

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スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とSTEM (STEAM)教育

科学と教育の関係を考える際に、わかりやすい具体例としてSTEM教育があります。STEM教育は2000年代に米国で始まった教育モデルであり、Science、Technology、Engineering and Mathematics = 科学・技術・工学・数学の教育分野を総称する言葉として用いられています。
これにArts(リベラル・アーツ)を加えて、より創造的な発想を育むことを意識したSTEAM教育という表現もあり、日本の文部科学省でもSTEAM教育の表現を用いています。科学・技術・工学・数学といった教育分野に注目しているという点においてはSTEM教育もSTEAM教育も同じと考えてよいでしょう。

もともとSTEM教育は、米国における科学技術開発の競争力向上という観点から、教育や移民に関する政策提案の中で語られてきました。オバマ政権時代には優先課題として取り上げられるほどのテーマであり、米国以外の新興国でも注目されています。

日本の教育現場でもプログラミングの必修化が進み、STEM(STEAM)分野の教育実践が進められています。その一方で、「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」によれば、日本は学校の授業 (国語、数学、理科) におけるデジタル機器の利用時間が短く、OECD加盟国の中で最下位という結果が出ています。

OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント

https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/01_point.pdf

コロナ禍における新たな教育のあり方に関連して、既に教育現場ではICT環境整備が加速化されつつありますが、物理的な環境だけでなく指導者側の受け入れ準備やデジタル機器とその利用に関わるトラブルなども表面化している事実もあります。

そうした要素もあり、教育におけるデジタル技術の活用やSTEAM分野の教育推進において、日本は他国よりも大きく出遅れていると言われがちです。
そのような状況において、日本国内のSTEAM教育の魁として注目されるのが、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の存在でしょう。

SSH自体は2002年度にスタートしており、開始以来その予算は年を重ねるごとに増額傾向にある点においても、注目度の高い制度です。
SSHの目的は、「高等学校及び中高一貫教育校における理科・数学に重点を置いたカリキュラムの開発、大学や研究機関等との効果的な連携方策についての研究を推進し、将来有為な科学技術系人材の育成に資する」とされており、学校指導要領によらない教育課程を編成・実施し、理科・数学に重点を置いたカリキュラムを開発できることがポイントになっています。

その他、大学や教育機関との連携や、科学系のクラブ活動の充実、全国のSSH同士の交流などにも力が注がれており、SSH指定校は日本のSTEAM教育を牽引する存在と言えるでしょう。

令和3年度指定校(218校)

https://www.jst.go.jp/cpse/ssh/school/list.html

科学・技術・工学・数学の教育分野は、SDGsやSociety5.0の推進を目指す上でも非常に重要な分野だと言えます。SDGsもSociety5.0も、世界的・地域的な課題と科学技術を結びつけて、誰ひとり取り残さない社会・経済発展と社会的課題の解決を両立を目指すものです。

これからの将来を担う若者が学習の一環として深いレベルで科学・技術・工学・数学を学び、基礎の掘り下げや応用的な取り組みに臨むことにより、日常的な意識や考え方としてSDGsやSociety5.0の定着化・持続可能性の向上につながるという見方もできそうです。

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また、SSH自体は、大学や研究機関などとの連携も視野に入れて展開されていますが、日本の国際競争力を強化するという視点で考えると、学校や制度といった枠組みだけは不十分でしょう。狭い枠組みの中だけで完結させるものではなく、社会全体との連携が強化されるようになれば、STEAM教育の意義がより鮮明になり、SSH指定校への入学を目指す学生のモチベーションもますます高まるかもしれません。

なお、SSHの成果と事例は、科学技術振興機構のWEBページに掲載されていますので、ぜひご覧ください。

SSHの成果と事例

https://www.jst.go.jp/cpse/ssh/ssh/public/results.html

 

教育と先端技術

前述の通り、STEAM教育のような最先端技術とその教育は世界各国で共通する課題です。
科学・技術・工学・数学に関連した教材や、教材として利用できる製品が数多くリリースされています。

 

ここでは、その代表的なものとして弊社で取り扱いのある商品をご紹介します。

プログラミング学習

  • iRobot Create 2
    お掃除ロボット「ルンバ」をベースとした、ロボット開発プラットフォーム。

 

  • Raspberry Pi 4
    プログラミング学習やIoT開発に最適な小型ボードコンピュータ。

 

  • Kebbi Air
    小中学校 (ビジュアルプログラミング) から、高校・大学 (プログラミング言語によるコーディング) まで、 学習レベルに合わせてプログラミングを学ぶことのできる、STEM教育に最適なロボット。

 

 

 

自動運転

  • Duckietown
    MIT(マサチューセッツ工科大学)発の、ロボット工学とAIを学ぶためのプラットフォーム。

 

  • Donkey Car
    ラジコンカー向け自動運転プラットフォームキット。TensorFlow(オープンソース機械学習プラットフォーム)を活用した組立済みの自動運転車。

 

ロボット工学

  • Pupper Robot
    ローコスト、かつカスタマイズやプログラムが可能なオープンソースの小型四足歩行ロボット。

 

  • Ned
    教育や研究の現場でも用いられる自由度の高い6軸ロボットアーム。

 

  • Crazyflie
    手のひらサイズのクアッドコプター組立キット。開発プラットフォームとして、豊富な拡張性による柔軟さは、教育などでの利用に適している。

 

リモート学習

  • STEMLab-125-10 Stay@home kit
    自宅にいながらのリモート学習に適したキット。クレジットカードサイズのコンパクトサイズでありながら、正確で優れた多機能なデバイス。

 

まとめ

SSHを含むSTEAM教育、および日本における次世代人材開発事業や制度が、今以上に存在感を発揮する社会になれば、学生の価値観や将来に対する展望にも今以上に注目度が高まっていくだろうと思われます。何よりも、これからの国際社会を担う人材育成の加速化につながりますので、今以上に大きなバックアップが期待されているのは間違いないでしょう。

テガラでも、SSHやSTEAM教育に関わる製品や情報を積極的に紹介してまいりますので、世界の教育・次世代人材育成におけるトレンド情報のご案内が、お客様の教育・研究開発のヒントになりましたら幸いです。