【特集記事】スマート農業に関連する3つの事例紹介

日本の農業従事者人口はますます減少の一途をたどっており、令和2年11月に農林水産省で公表された「農林業経営体調査結果」によると、農業経営体のうちの個人経営帯は、平成27年から令和2年の5年間で、30万3千経営体減少 (22.6%減)しているとされています。

その一方、団体経営体については5年間で1千経営体増加 (2.6%増)しており、そのうち約半数の45.6%の団体経営体が「データを活用した農業を行っている」との回答をしています。

農林水産省:2020年農林業センサス結果の概要 公開資料
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noucen/index.html#y

その背景には、データやそのデータに基づき動作する機械などを活用した「スマート農業」等の技術を取り入れることで、効率的で生産性の高い、かつ環境にも優しい農業形態に注目が集まっていることが考えられます。

そこで今回は、ユニポスで取り扱いのある 3社の海外メーカーの製品が、農業分野において活用されている活用事例やソリューション事例をご紹介します。

野生動物の発する音声や超音波などを記録するレコーダー装置 SongMeter シリーズを販売する、米国 Wildlife Acoustics 社にて情報提供されている活用事例をご紹介します。

食虫性のコウモリは、農薬などを使用することなく作物に対する虫害を防ぐことのできる益獣として注目されています。こちらの事例は、同社製品のバットディテクター Song Meter SM4BAT FS および Kaleidoscope Pro を用いて、スリランカのお茶のプランテーションにおけるコウモリの生態確認を実施した例となります。

 

Wildlife Acoustics :
スリランカの茶プランテーションでのコウモリの識別

こちらの内容は以下の記事を参照し翻訳したものとなります:
https://www.wildlifeacoustics.com/customer-stories/bats-and-tea-using-acoustics-to-identify-bats-on-a-plantation-in-sri-lanka

 

スリランカ  ルフナ大学 (University of Ruhana)の研究チームが、以下のような課題に対してどのようにWildlife の音響録音機器を活用しているのか、見てみましょう。

  • 茶プランテーションにおける害虫駆除に役立つ、コウモリの生態系サービスを理解する
  • ランドスケープにおける異なる8種類のコウモリの存在を見つけて確認する
  • 農業の集約化がどのようにコウモリの個体数に影響するのかを理解する

なぜ「コウモリ」と「お茶」なのか

スリランカは世界第4位のお茶の生産国であり、コウモリは茶プランテーションにおける昆虫の主要な捕食者です。またコウモリは生物多様性と環境変化の良い指標だと考えられています。茶プランテーションのコウモリに関する研究はとても少なく、害虫を規制することで茶プランテーションへ利益をもたらすために、コウモリの多様性を評価する必要があります。

なぜ Acoustics なのか

ルフナ大学の Tharaka Kusuminda 氏のチームは、茶プランテーション内のコウモリの種族構成と彼らの豊富さを評価するために、最初は「捕獲」の手法を採用していました。しかしネットや罠のような捕獲方法は、彼らの生息地である開放的な自然には不適切でした。そこで、無人の Wildlife レコーダーの出番でした。

設計と方法

レコーダーの設置個所として14か所のサンプリング地が選ばれました。SMM-U2 超音波マイクを備えた2台の SM4BAT レコーダーEcho Meter Touch 2 Pro が、ルフナ大学の断片的な森林パッチでテストされ、また様々なレコーディングスケジュールと設定がテストされました。

そして2019年2月中旬には、7か所でのフィールドワークが始まりました。SMM-U2 超音波マイクを備えた 2台の Song Meter SM4BAT FS ディテクターは、茶プランテーション内の日影に位置する木に取り付けられ、ひとつは茶プランテーションの端に位置する場所に、もうひとつは中央に位置する場所に設置されました。コウモリの夜行性の活動を全てカバーするため、それぞれの場所で日没から日の出まで3夜連続でコウモリの音声が録音されました。

初期の所見

Kaleidoscope Pro ソフトウェアを用いた大学での最初の分析では、さまざまな茶栽培地域にわたって8種類のコウモリの存在が示唆されました。また録音された大量の採餌音から、コウモリが狩猟採集のためにお茶を使用していることが確認されました。

ユビナガコウモリ (Eastern bent wing bat)の反響定位エコーのスペクトログラム (Wild Acoustic WEBサイトより)

このプロジェクトはまだ初期段階ですが、Tharaka Kusuminda氏と彼のチームメンバーは、スリランカの茶プランテーションでのコウモリの隠された生活についてもっと知りたいと考えています。

次なるステップ

このプロジェクトの最終結果は、スリランカの森林局、野生生物保護局、および茶産業界に共有され、食虫性のコウモリの活動と種の豊富さが、生態系に優しい茶プランテーションのランドスケープにどのように良い影響を与えるのかを定量化します。このデータはコウモリの生態系サービスを最大化するためにも、彼らに優しい茶プランテーションを作るための政策策定や土地の使用計画を推進するのにも役立つことになるでしょう。

 

主に環境に関する研究とモニタリングに関連する科学機器を取り扱う、オーストラリアの edaphic scientific 社にて情報提供されている、オンデマンド式灌漑スケジュールに関する情報をご紹介します。

与える水を節約しながらも植物の成長に対し最大の結果を出すために、土壌や植物から測定された需要や要件に応じて灌漑のスケジュールを適応する「オンデマンド灌漑」に関する研究とその結果、そしてそのオンデマンド灌漑に適した機器が紹介されています。

 

edaphic scientific:
オンデマンド式の灌漑スケジュールによる水の投入量の削減

こちらの内容は以下の記事を参照し翻訳したものとなります。また本文中の出典を示した図についても、同ページの図を参照しております:
https://edaphic.com.au/reducing-water-inputs-with-on-demand-irrigation-scheduling/

 

最新の研究では、土壌または植物に基づく意思決定により、灌漑を最大で40%削減できることが示されています。

水資源はますます高価になり、不足しています。コストを削減し、水を節約するためには、灌漑スケジュール (つまり、タイミングと投与量)を変更するという対応が可能です。しかしながら、灌漑を変更したり減らしたりする場合、収穫量や成長を減少させないことが重要です。収穫量を維持しながら、ましてや増加させながら灌漑を減らすというようなバランスをとることが、灌漑の管理にとっては理想的な結果です。最新の研究によると、このような理想的な結果は、土壌および/または植物ベースの灌漑スケジュールにより得られると主張されています。

オンデマンド灌漑とは

Irrigation ScienceWater に掲載された米国テネシー大学の科学者による最近の研究では、土壌または植物の要件に基づいて灌漑をスケジュールを立てると、植物の成長と光合成に認識できるような影響を与えることなく、全体の水投入量を減らすことができることが示されました。

土壌または植物に基づいて灌漑のスケジュールを立てることは、「オンデマンド」灌漑としても知られています。つまり、灌漑は、土壌および/または植物から直接測定された需要や要件に応じて適用されるのです。オンデマンド灌漑の技術は、一定量の水が定期的に適用される「従来の」または「伝統的な」灌漑技術とは対照的です。

研究者による調査とその結果

土壌ベースの灌漑スケジューリングのために、研究者は METER Group の HYPROP2 を使用して、土壌水分ポテンシャルと体積含水量の関係を決定するために、土壌水分特性曲線としても知られる水分保持曲線を作成しました。土壌水分ポテンシャルが-10kPaより乾燥すると、灌漑が開始されました。これは、研究者の実験基質の約40%の土壌体積含水量に相当しました。

HYPROP2を介して生成された水分保持曲線。出典:図1、Jahromi et al 2020、Water、12、362

 

植物生理学に基づく灌漑スケジュールに対して、研究者は、灌漑を開始する必要があるときの臨界閾値を確立するために、光合成と土壌の体積含水量の関係を使用しました。土壌が乾燥する (つまり、土壌の体積含水量が減少する)と、光合成は減少します。研究者たちは、光合成が10%減少したら、灌漑を開始する必要があると述べました。光合成が10%減少した際、研究者の実験基質の土壌体積含水量は約35%でした。

研究者によって採用された、植物生理学に基づく灌漑スケジューリングアプローチは、Edaphic Scientific社によって以前に強調された「灌漑曲線」法に類似しています (参照:メーカーページ)。それらの方法の違いは、灌漑曲線が光合成ではなく樹液流または気孔コンダクタンスに基づいていることです。ただし、方法や手法、アプリケーションは類似しています。

光合成と気孔コンダクタンス測定から生成された灌注曲線。出典:図2、Jahromi et al 2020、Water、12、362

 

Jahromi 氏らによる実験の結果は、従来の方法と比較して、土壌ベースの灌漑スケジュールに適用される水が最大30%削減されることを発見しました。同様に、従来の方法と比較したところ、植物ベースの灌漑スケジュールの水使用量は最大40%削減されました。灌漑を削減しても、光合成や成長への悪影響は認識されませんでした。

この研究は、土壌または植物ベースのセンシング技術を採用することで、植物の成長や収穫量に悪影響を与えずに、いかに灌漑を潜在的に削減できるかを強調しています。MPS-6 soil water potential Sensorなどの土壌検知技術はキャリブレーションされており、設置が簡単で、継続的なメンテナンスはほとんど必要ありません。また Implexx Sap Flow Sensorなどの植物ベースのセンサーも同じくキャリブレーションされており、evapotranspiration from an ATMOS 41 weather station と組み合わせて使用することで、オンデマンドの灌漑スケジュールのための強力なデータを提供することもできます。

 

pH / ORP / D.O. / Conductivity / Temperature など水質に関連するものを中心に、様々な値を計測するための各種機器を開発する、米国 Atlas Scientific 社が情報提供している、6種類の水耕栽培システムと、それぞれの特徴を示したブログをご紹介します。

水耕栽培の対象となる植物の種類や必要なスペース、難易度、長所・短所などが、各水耕栽培システム毎に細かく紹介されています。またこれらの水耕栽培を成功させるためにおすすめの計測機器も挙げられています。

 

Atlas Scientific :
6種類の基本的な水耕栽培システム – どれを使用すべきなのか?

こちらの内容は以下の記事を参照し翻訳したものとなります:
https://atlas-scientific.com/blog/hydroponic-systems/

 

水耕栽培は「はたして土壌は必要なのか?」という大きな問題を提起します。古代の七不思議のひとつとされる「バビロンの空中庭園」は、高度な灌漑技術が適用された水耕栽培が利用されているとして、名を馳せました。ところで、多くの植物愛好家は主に「成長」「低労力」、そして/または「素晴らしい美学」のために植物に目を向けます。土壌はこの「労力」を増大させる可能性があり、土壌に関する重要性を見落とすことは一般的です。植物の成長にとっての素晴らしい結果を生み出しますためには、土壌のpHを管理することになります (How to Mesure the pH of soil : メーカーページ)。そこで、土壌を重要な要素から除外してみませんか?

土壌は自然環境では2つの主な目的を提供します。ひとつは植物を浸食やその他の危険から守ること、そしてもうひとつは植物の成長のための栄養素を保持することです。もし植物を屋内もしくは制御された環境で育てているならば、水耕栽培システムは植物の成長を促進し、水とエネルギーを効率よく利用するための素晴らしい選択です。

水耕栽培とは?

水耕栽培とは「無土壌」の園芸です。水耕栽培システムは土壌を重要な要素から除外し、植物を栄養水溶液の中もしくは周りに吊るすことで成長させることができます。栄養保持の必要性や危険性が植物の生活の中から取り除かれるので、土壌は必要ではなく、水耕栽培システムは植物の効率的な成長に役立ちます。例えば浮草などの浮遊水生植物を想像してみてください。これと同じようなセットアップは、水生環境で自然に育つことのない植物に対しても実現することができます。太陽光、スペース、そしてその他の成長条件については既にチェックされていると考え、植物の根は自由に水溶液から栄養素を吸い上げ成長します。

植物を育てるために、多くの水耕栽培の家庭的手法と産業的派生法が存在しています。水耕栽培はカスタマイズ性が高く、またもし温度 (temperature)や酸素について適切なモニタリング装置が利用できるようであればなおさらです。このように水耕栽培は、最適な成長コンディションと結果を得るために様々な植物の品種に合わせることができます。もしかすると既にこれまでに温室で水耕栽培のセットアップを見たことがあるかもしれませんが、存在する全ての水耕栽培システムは、以下の6つの主要な水耕栽培に分類されます。

  • Aeroponics
  • Wick
  • Water Culture
  • Ebb and Flow
  • Drip
  • NFT (Nutrient Fluid Technique)

この記事はあなたの状況に合った正しい水耕栽培のセットアップを理解し選択するのに役立ちます。米国で学校水耕栽培STEMプログラムを実施している「Green Our Planet (WEBサイト)」によると、水耕栽培システムは従来の土壌園芸と比較し、同じスペースにおいて最大2倍の早さで植物を成長させ、3~10倍の成長量を生み出し、そして最大90%以上の水を節約できるとされています。これらは、水耕栽培において酸素、湿度、温度、pH監視 (pH monitoring)、照明などをセットアップする制御の強化によりもたらされます。もしこの未来的な園芸技術にまだ確信が持てない場合には、構築可能な6つの異なる水耕栽培システムを見てみましょう。

基本的な水耕栽培システム

1. Aeroponics Systems

簡単にいうと、エアロポニックスシステムでは植物を空中に吊るし、植物の根にミストを噴射するための装置を利用します。余分な水は根から下の貯水池へと滴り落ち、霧吹きノズルを通して再利用されるため、水の効率が非常に高いです。貯水池の寸法が、育てたい植物のサイズを収めるのに十分な大きさである限り、全ての種類の植物をエアロポニックスシステムで成長でさせることができ、これがこのアプローチの大きな利点です。

このシステムの欠点は、他の水耕栽培システムと比べて設定が難しくなる可能性があること、そしておそらく全ての中でこのシステムがもっとも先進的なものであることです。根が空中に吊り下げられているので霧吹きの間隔は比較的短くある必要があり、植物の乾燥を防ぐために短いサイクルのタイマーが必要でそのためにエネルギー消費が増加します。また霧吹きの数が多いため、これらのノズルは時間の経過とともに詰まり、そして水の中の栄養素や不純物のために洗浄するのが難しくなる可能性があります。同様に、もしシステムに障害が発生した場合に植物が乾いてしまうを避けるために、このセットアップでは湿気は懸念事項となります。※この問題は湿度センサ (humidity sensor)を使えば簡単に監視および防止ができます

全体的に、エアロポニックスはシステムのセットアップとメンテナンスのための時間とリソースが確保できるのであれば、水耕農業にとってとても効率的なアプローチだと言えます。

2. Wick Hydroponics

最先端の水耕栽培システムと比較し、ウィックのセットアップはおそらく他の水耕栽培システムの中でも最も簡単なアプローチです。電気も、派手なポンプも、霧吹きシステムも必要ありません。基本的な考え方は、古い oil wick candle (油に芯を浮かせたろうそく)に似ています。芯(通常はナイロン)が栄養溶液の貯水池に沈められ、そして植物の成長トレイに栄養溶液が供給されます。この成長トレイには、バーミキュライトやココナッツファイバーのような吸水力のある物質が含まれており、芯から植物へと栄養素が移動します。

このアプローチはシンプルなセットアップで家庭ハーブのような小規模のガーデニングにとても便利です。セットアップ後の労力はほとんど必要ありませんが、大きな植物やトマトのような大量の水を必要とする植物には適していません。またこのシンプルなウィックアプローチは、植物への栄養分布の均一性が低下します。適切な栄養レベルを維持するためには、数週間毎に適切なチェックの実施が推奨されます。※これは導電性プローブ (conductivity probe) を使用して水のECレベル (電気伝導率)をチェックすることで簡単に実現することができます

病気予防のメンテナンスは、芯の栄養素の移動に干渉する可能性のある貯水池の溶液の中の過剰な粒子からの栄養素の蓄積も減らします。

3. Water Culture Hydroponic Systems

引き続きシンプルな領域でいうと、Water Culture Hydroponic も水耕栽培への非常に簡単なアプローチを提供します。必要なものは、貯水池、ネットポット、そして栄養素だけです。このセットアップは、他のたくさんのインプットを変更することなく、さまざまなサイズの植物に対してカスタマイズ性が高いです。正しいサイズのネットポット、貯水池をセットアップし、そして植物を栄養溶液に沈めるだけです。小規模な Water Culture のセットアップはメイソンジャーの中ですら可能で、一方 大規模な植物向けの Deep Water Culture も可能です。

Water culture hydroponic システムはWickセットアップと比べて、常に根が水に触れていることで植物がコンスタントに栄養素を吸い上げることができる点で大きな利点があります。しかし、もし適切に管理されていない場合、根は病気になり、腐敗し、死んでしまう可能性があります。この方法では、water culture セットアップの適切な栄養レベル、pH管理、そして溶存酸素管理 (dissolved oxygen monitoring)が、植物にとっての不適切な成長コンディションを防ぐためにとても重要になります。エアストーンやポンプによって水を酸素処理することが強く推奨されます。

全体的に、Water culture hydroponic システムは植物の成長を急速に増加するためのとてもシンプルで直感的な方法だといえます。

4. Ebb and Flow Hydroponic Systems

Ebb and Flow Hydroponic システムは、図のように植物生育床から溢れ出た栄養溶液が貯水池に排出され、再び水中ポンプを介して循環するシステムです。このシステムは“ebb and flow (潮の満ち引き)” のような海洋潮汐を利用し、吸水性のある培地で作られた生育床の中の植物の根を浸しますが、しかし植物が水分で過飽和になる可能性を最小限にします。ポンプには生育床を浸水させるためのストップ・スタートのサイクルタイムがあり、通常生育床の下に位置する貯水池へ水が排水される時間を提供します。

このアプローチは、他のアプローチと比べて多くのスペースを必要とするため、必要とされるスペース要件のために、大きな植物に対しては使用できる可能性が低くなります。また水中ポンプの導入によりエンジニアリングも必要とされますが、対象の植物のニーズに基づいたより高度なカスタマイズが可能となります。技術性をさらに高めるには、流量計 (flow meter) を使用することで最適な成長コンディションに合わせて 潮の満ち引きのサイクルを微調整することができます。なお生育床を溢れさせてしまうのには、気を付けてください。正しく実施すれば、自動化と自動運転のセットアップは、素晴らしい成長結果を生み出します。

5. Hydroponic Drip Systems

カスタマイズ性についていえば、もし頻繁に植物やガーデニングのアプローチを変更する場合にはこのDrip システム が最も適切です。この方法では、吸水性のある生育培地に植えられている植物の根に水を滴下します。貯水池に排出された余分な水は、ポンプで汲み上げられてサイクルを再開します。このアプローチは、Aeroponics システムの霧吹きサイクルと似ており、同様の酸素ガスモニタリング (oxygen gas monitoring) を使用することができますが、霧吹きノズルの代わりに滴下のための異なるチューブの種類を使用することになるため先進性はあまりありません。

排水の貯水池からドリッパータンクを手動で補充するという簡単なセットアップも実行できますが、2つのポンプ (ひとつは溶液を混ぜて酸素処理するため、そしてもうひとつは貯水池から滴下ノズルへ溶液を移動するためのもの)をセットアップすることもできます。この水耕栽培システムで小規模に実験をしているというわけでなければ、自動運転プロセスのためにはポンプアプローチを使用することをおすすめします。

全体的に、Drip システム は育てたい植物に対する利用可能なスペース、そしてその植物のタイプ、量、およびサイズに対しとても柔軟性が高いですが、このシステムでは複数のポンプと貯水池のメンテナンスと維持に煩わされる可能性があります。

6. Nutrient film technique for hydroponics

Nutrient film technique は、より高度な設定で「drip」と「ebb and flow」の水耕栽培システムを組み合わせる方法です。基本的な考え方は同様です (生育床と、その下に栄養素排出のための貯水池を設置する形式)。通常、成長床は溶液を排出するために一方の方向に傾いており、通過の際に植物が吸収することになる栄養溶液の薄い層を作っています (したがって”film”というタイトルがついています)。

この薄い層により、小さな根の植物にはこの技術がもっともよく機能しますが、このNFT(Nutrient film technique)のセットアップは、状況によって比較的簡単にスケールアップもしくはスケールダウンすることができます。また十分な栄養素が植物の根に届くよう、吸収性のある生育培地よりもネットポットを使用することをおすすめします。

このNFT水耕栽培システムは、酸素処理のためのポンプと、生育床へ貯水池の溶液を連続サイクルでポンプで送ることにより、より複雑になります。さらに、もしなにか故障があれば、根を浸す薄い水の流れが止まることで植物はすぐに乾ききってしまう可能性があります。とはいっても、このアプローチでは全ての成長インプットを高く監視することができ、そしていくつかの最高の水耕栽培システムの成長結果を生み出すことで、水耕栽培の世界で広く受け入れられるようになります。

Aquaponics vs Hydroponics

Aquaponic システムは、Water culture systemと同じアプローチを使用しますが、水の中に栄養素を加える代わりに、生きた魚を追加します。この方法は通常、魚と植物の育成を一つの閉鎖システムに結合するために使用されます。魚を利用する背景には、彼らが植物にとって栄養素へと変わる廃棄物(たとえば硝酸塩やアンモニア)を生み出すという考え方があります。理想的には、魚が幸せに生活し、植物が水をきれいにし、そして全ての関係者達が繁栄することになります。しかし、汚れた水が魚を殺してしまったり、魚の出す廃棄物が植物を育てるのに不十分であったりする可能性もあるため、そのバランスは難しいです。

アクアポニックスは水耕栽培の一つの形態ですが、全ての水耕栽培はアクアポニックスであるとは限らないため、このアプローチは主に植物の成長に感心がある場合には必要ではありませんが、水耕栽培システムの議論において名誉ある言及に値します。

「どれが私にとって最適な水耕栽培なの?」

水耕栽培のシステムを選択する上で最初に考慮すべきことは、水耕栽培システムにおいてどれほどの時間と手間をかけられるかです。手間の少ないセットアップとメンテナンスの水耕栽培システムは「Wick」と「Water culture systems」とより協調しますが、「Drip」「Ebb and flow」「NFT」アプローチではセットアップとメンテナンスに更にエンジニアリングが必要とされます。水耕栽培システムごとのメンテナンス要件は若干異なりますが、全ては同様のパラメータに要約され、Atlasの Wi-Fi 水耕栽培キット (wi-fi hydroponics kit) で簡単に監視することができます。このデバイスは水耕栽培システムが最適な状態にあることを確認するために、リアルタイムに pH, 導電率, 温度の測定値を提供します。

植物生産のサイズ感や規模についても同じことが言えます。ひとつの必ず考えるべきことは、利用可能なスペースについてです。たとえば、「Water culture system」においては大規模な成長オペレーションにはよりコストがかかるため、このシステムはおすすめできません。また育てたい植物のタイプや種は、水耕栽培システムを選ぶ上での大きな要因となります。「Drip」と「Ebb and flow」は、より多様な植物に対しカスタマイズ性と柔軟性を提供しますが、多くのセットアップを必要とします。

要約すると、以下に6種類の水耕栽培システムの長所と短所を示します

Aeroponics

  • 長所:水の効率性が高く、生育培地を考慮する必要がなく、植物は年中無休で高度に酸素処理される
  • 短所:セットアップや維持に費用がかかり難しく、エラーへの余地が小さい

Wick

  • 長所:シンプル。安価。ポンプや電気が必要無い
  • 短所:大規模な植物は十分な栄養素を得ることができず、栄養分布に一貫性がない

Water Culture

  • 長所:シンプル。安価。簡単にカスタマイズができて幅広い種の植物に対応する
  • 短所:大規模な場合は面倒になり得る、溶存酸素が正しく監視されていない場合に植物が腐敗しやすい

Ebb and Flow

  • 長所:カスタマイズ性が高く、自動化されたセットアップのエネルギー要件が少ない
  • 短所:セットアップが難しく、スペースが必要

Drip

  • 長所:あらゆるスペースやさまざまな植物への柔軟性がある
  • 短所:自動化プロセスのためのセットアップやメンテナンスが難しい

NFT (Nutrient Fluid Technique)

  • 長所:高度に制御可能なインプット、簡単なスケーリング
  • 短所:技術的なセットアップ、綿密なモニタリングが必要

 

Atlas Scientific では様々な計測機器を取り扱っていますが、もしもどのモニタリングデバイスが選択した水耕栽培のニーズに適しているのかがはっきりしない場合、お気軽に Atlas Scientific にお問い合わせください。

まとめ

SDGsの17の目標のひとつである「目標2.飢餓をゼロに」にも挙げられているように、限られた資源で安全な成果物(収穫物)を生み出す持続的な農業を確立し、食糧問題に打開策を生み出すことは世界的な課題となっています。

目標2.飢餓をゼロに:
飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する

農林水産省:SDGsの目標とターゲット
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/sdgs_target.html#goal_02

 

冒頭に挙げたように日本の農業従事者は減少していますが、それを補うように世界中では農業に関する研究開発が進んでいます。それにより、これまでとは異なるアプローチの農業への適用が進み、生産性や安全性を下げることなく、これまで以上の成果を上げることさえも可能になってきています。

今回の記事ではユニポスで取り扱いのある製品を一例にご紹介しましたが、「〇というメーカーの△という製品に興味がある」といったご要望がございましたら、研究開発者向け海外製品調達サービス ユニポス へ是非お気軽にお問い合わせください。これまでに取り扱いのない製品でも、メーカーへ問い合わせ、お取り扱い可否を確認いたします。