【特集記事】LiDARのセンシング応用について

■こちらは、2020年8月17日に投稿された記事のため、情報の内容が古い可能性があります。

 

LiDARの歴史

自動運転車の技術として注目を浴びているLiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)は、1960年頃から宇宙の距離を測定するためにNASAと米軍によって開発が進められていました。大幅に小型化・低コスト化が進んだのは2015年以降であり、それにより今でこそ商用利用が加速していますが、約35年ほど前までは商品化すらされていなかったというので驚きです。そして現在では様々な分野で、光を用いたリモートセンシング技術が応用されています。

1930s 掃引サーチライトビームを使用して大気の組成を測定する実験を開始
1960 セオドア・メイマン氏が最初の実用的なレーザーを構築し、実演
1962 レーザービームを使用して地球から月までの距離を測定
1971 LIDARを使用した月面をマッピング(アポロ15号の宇宙飛行士)
1985 商用LIDARの販売を開始(Larsen-500)
1990s 地理的なデータマッピングにLIDARが幅広く採用
1994 LIDARがスペースシャトルディスカバリーで宇宙に持ち込まれ大気の研究に使用(NASA/初の例)
2005 DARPAグランド・チャレンジ(ロボットカーレース)で自動運転車に搭載され注目を集める
2008 火星にLIDARスキャナーを持ち込み惑星の大気を調査(NASA)
2015 DARPAの研究開発によりLIDARが大幅に小型・低コスト化

 

今後もLiDAR市場の成長は著しいものになるとされており、2020年の推定11億米ドルから2025年までに28億米ドルに達し、CAGRが20.7%と予測されています。

LiDAR Market (MarketsandMarkets Research Private Ltd. )
https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/lidar-market-1261.html

A brief history of LIDAR
https://www.explainthatstuff.com/lidar.html

 

LiDARについて

LiDAR (Light Imaging Detection and Ranging)は、表面上のオブジェクト(対象物)を検出し、そのサイズと正確な配置を検出する光を利用した検知・測距技術のことです。

LiDARは、可視光、紫外光、または近赤外光を利用してオブジェクトを描きます。非金属アイテム、岩石、雨、雲、化学物質、エアロゾル、さらには単一分子など、さまざまな材料に焦点を当てることができます。

LiDARの活用の場は1か所にとどまらず、空中、地上、または移動式のスキャンを可能であり、幅の狭いレーザービームであれば、高い解像度と精度で物理的特徴をマッピングできます。例えば、航空機においては高解像度の衛星画像(解像度30cm以上)でマッピングできます。

LiDAR機能のアルゴリズム

1.レーザー信号の発信
2.レーザー信号が障害物に到達
3.障害物から信号が反射
4.受信機に信号が戻る
5.レーザーパルスが登録

LiDARテクノロジーの活用

次の波長を使用します

– 気象/ドップラー・ライダー赤外線 (1500-2000 nm)
– 地上マッピング用の近赤外線(850-940 nm)
– 水深測定用の青赤 (500-750 nm)
– 気象学のための紫外線 (250 nm)

近年、風の動きをはっきりと見ることができるドップラー・ライダーの適用について研究が進んでいます。このアプローチは、航空の安全性、大気データの視覚化、天気予報、災害対策に非常に役立ちます。

What is LiDAR technology?
https://blog.generationrobots.com/en/what-is-lidar-technology/

 

LiDARの主なアプリケーション領域について

1.拡張現実(AR)におけるLiDAR

拡張現実(AR)は、仮想コンテンツを現実世界に存在するかのように表現するテクノロジーですが、LiDARはこのARシステムに明瞭さを与え、最終的な出力の向上に役立ちます。

LiDARスキャナでは、点群を使用した高品質の3Dマッピングが可能で、精度の高い点群データによりARエクスペリエンスを向上させます。

2020年3月に発売されたApple社のiPad Proは、モバイルとして初めてLiDARスキャナが搭載されました。これよりARアプリがさらに増えていくことが予測されます。LiDARから得られる形状や奥行などの情報はとても正確で、ゲームやヘルスケア、工場や建築などの作業現場、設備における検査や点検・トレーニングなど、実用的なARアプリの開発に期待が高まります。

Apple’s LiDAR Scanner a game-changer in scanning technology?
https://www.geospatialworld.net/blogs/apples-lidar-scanner/

 

2. 自動運転車のLiDAR

実用化が近いとされる 自動運転車。LiDARは「自律車両の目」と呼ばれており、距離の計算や障害物の識別、また高解像度のデジタル画像の作成を行います。LiDARセンサーからの情報は、車両間の距離の測定データをもとに衝突回避に役立てるほか、減速や加速のタイミングの決定(ブレーキ操作)にも使われます。

ライダー(LiDAR) vs レーダー(RADAR)  – 自動運転の長所と短所

LiDARの長所は、短波長により小さな物体を検出できる点です。オブジェクトの正確な3Dモノクロ画像を構築できるのが特長です。
一方LiDARの短所は、夜間または曇りの天候での使用制限です。動作高度はわずか500-2000mです。

RADARの長所は、天候に左右されにくい点と作動距離の長さです。曇りなどの気象条件や夜間でも操作でき、作動距離がLiDARと比べて長いです。
一方RADARでは、小さな物体を検出できないのが短所です。レーダーは波長が長いため、オブジェクトの正確な画像を取得できません。

Lidar vs Radar: pros and cons for autonomous driving
https://archer-soft.com/blog/lidar-vs-radar-pros-and-cons-autonomous-driving

 

3. 気候変動緩和におけるLiDAR

LiDARによる超高解像度で正確な画像は、自然を把握するために非常に役立ちます。地形・植生・森林破壊・農業パターンや、炭素循環などの地質学者・科学者・自然科学・環境学などにおいても有益です。

例えば炭素循環データにより森林が保存している炭素の正確なレベルと、温室効果ガスの影響を相殺するために植えるべき樹木の数を把握できるようになりました。また広範囲にわたる植生の高さを測定するために使用できるアクティブなリモートセンシングシステムは、植生や精密林業だけでなく災害対策(森林火災管理など)にも役立ちます。地域全体の植生の高さ、密度、その他の特性を含む構造をマッピングすることは非常に重要なツールといえます。

The Basics of LiDAR – Light Detection and Ranging – Remote Sensing
https://www.neonscience.org/lidar-basics

 

4. 測量におけるLiDAR

LiDARの最も広く知られているアプリケーション領域の1つであるLiDAR測量は、建設、都市計画、および地域の地形の調査の分野で使用されています。

LiDARによる測量は、データを非常に高速に収集するため、従来の測量方式よりも優れています。LiDARを使用して作成された空間モデルの誤差範囲はごくわずかであり、最終的な意思決定を改善します。

地表面標高モデル(DEM)は測量で使われる値で、x座標とy座標とともにz座標値を持つデジタル標高モデルを表します。標高値は、道路、建物、橋など、あらゆる場所で使用されており、表面の高さを捉えやすくなりました。

 

5.考古学におけるLiDAR

LiDARは、考古学者の時間と労力を節約し、以前は作成することがほぼ不可能であったモデルを作成することを可能にします。 古い遺跡を発掘するために、特に重要な役割を担っています。

以下の例では、2名の考古学者がLiDARを使用して、古代マヤの都市の3D画像を作成しました。LiDARは、その古代都市への前例のない洞察を提供します。

Exclusive: Laser Scans Reveal Maya “Megalopolis” Below Guatemalan Jungle
https://www.nationalgeographic.com/news/2018/02/maya-laser-lidar-guatemala-pacunam/

 

6.その他のLiDARの応用

・マイクロトポグラフィー (対象物を貫通して表面の値を検出)
・農業 (農地の標高マップ)
・観光と公園の管理
・環境アセスメント (植物と環境を保護)
鳥類の生物多様性
・洪水モデルのシミュレーション (河川の氾濫など)
・流域と河川の描写、河川調査
ELC (態学的および土地分類)
太陽エネルギー計画
・GIS (可視域解析)
氷河の体積変化
・事故や犯罪現場の記録
・建築 (建物の構造をキャプチャ)
・セルラーネットワーク計画
・下水道およびマンホール調査 等

今回はLiDARのセンシング応用についてご紹介しました。幅広い分野で活用されるLiDARは、今後ますます目が離せない存在だと言えます。

なおテガラでもさまざまなLiDAR製品を取り扱っております。お気軽に問い合わせください。